東京都の講師派遣事業で「聖学院高等学校」の金融教育授業を実施

2024年6月、東京都の「金融経済教育に関する講師派遣事業」により、一般社団法人日本金融教育支援機構(以下「当機構」)の講師が、聖学院中学校・高等学校で高校2年生の1学級を対象に金融教育の出張授業を行いました。
メイン講師として当機構認定講師の高野具子、サブ講師として皆越慎吾細田佳代が担当しました。
休憩をはさんで100分の授業は、当機構の独自コンテンツをもとに進められました。 授業の内容と当日の様子、受講した生徒さんの反応と、担当教諭の先生の感想を紹介します。

講座内容

授業は金融への理解を深めることを目的に、当機構で開催している「FESコンテスト」への参加を視野に入れた内容となる、「投資をする前に知っておくべきお金のこと」というテーマで行いました。 「FESコンテスト」とは、「中高生」が「小学生に伝えたいお金のこと」を1分の動画にまとめて投稿してもらうコンテストです。アウトプットである動画作成を目標として、インプットの授業を行いました。 授業は生徒たちが「自分ごと」としてとらえやすいように、そしてアウトプットのイメージを持ちやすいように、ディスカッションを多く取り入れて行いました。

【 前半 】 お金の役割や価値について

授業の前半は、お金の役割や価値について考えました。

お金の役割の一つに、「誰かに働いてもらうことができる」こと、つまり労働の確保があることに気づきました。
そして反対側から見ると、働くことでお金を得られる、働くことでみんなが幸せになり「ありがとう」が生まれることに気づきます。

ディスカッションを交えて、働くとはどういうことか、稼ぐとはどういうことかを考えました。また、資本家と労働者の関係について学び、有効な資産形成の手段である「投資」を後半で学びます。

【 後半 】 投資について

後半は「投資」と「投機」の違いについて学び、過去20年で株価が右肩上がりに高くなっている3社を例に、長期的に成長する企業は、どんな企業なのかを考えました。

そして、「もし自分が学校の株主だったらどんな学校にしたいか?」というテーマでディスカッションを行い、投資の本質とは何か、お金での投資ばかりが投資ではないことを学びました。

全体を通じて

難しいお金の話を、身近な例で自分ごととして考え、お金の価値や投資の意味を考えました。お金そのものに価値があるわけではなく、お金の価値の裏に働いている人がいて、その働く人への対価の形としてお金が支払われていることをお伝えしていきました。

そこから、高いものがすべて良いということではなく、価値の判断基準・幸せの基準は「自分で決める」ことが重要であることを学びました。

アウトプット(「FESコンテスト」へ向けた金融教育動画の制作)

インプットのあと、この学びを自分よりも年下の子どもたちに伝えるための金融教育動画を制作しました。
完成した動画は、当機構が主催する「FESコンテスト」に応募することができます。

動画を制作する中で、レイヤーは異なれど自分たちが学校生活に対し持っていた不満と同じ不満を小学生も持っているのではないかという仮説を立て、「お小遣い」「将来への貯蓄」「趣味と貯金」などをキーワードに高校生目線で小学生へのメッセージを伝えました。

自分の学びを動画を通して他者に伝えるという体験が自身の学びを俯瞰する構造になっており、一歩引いて自分自身のことを考える機会にもなったようです。

生徒の声や反応

学校の株主だったら、トイレをキレイにしてほしい。バイトOKにしてほしいなど様々な声が上がりました。
反対に、「女子を入れるのはどう?」と聞くと「それは聖学院ではなくなります!」と断固反対。聖学院ライフを楽しんでいる姿をうかがい知ることができました。

株や経済の話を自分の身近なモノに例えて考えることで積極的な発言をしてくれる生徒さんが多くいました。
また、お金の使い方や価値観などについて友達と意見交換することで、自分が大切にしていることを再認識して「自分ごとのお金」について考えている生徒さんも見受けられました。

講師陣にとっては、FESコンテストの目的でもある「伝えたいコト」がひとりひとりの中に根付いたであろうことを感じ取れる時間となりました。

教員アンバサダー:伊藤先生のコメント

生徒は日々の学校生活の中で様々な不安を口にします。これは自分たちの生活を向上させるうえで大切な要素です。ですが、この不満を「自分以外の誰かがやってくれるもの」と他責化してしまう時点で文句に留まってしまいます。
問題の所在はどこか、どうすれば他人も納得してくれるか、お金はどうやって工面するかといった案を考えることが、不満を不満で終わらせずに昇華させる大切なプロセスであると思います。

行っていただいた授業の中で生徒たちはそれらについて考え、お金が機械的に労働者に支払われるのではないことを理解しました。生活の向上や不便の軽減という対価にお金が伴う営みこそが労働であることを自らの経験を通して学びました。

ご案内

一般社団法人日本金融教育支援機構では、東京都の講師派遣事業以外でも、ご要望に応じた金融教育のカリキュラム作成と講義を実施しています。

学校ごと、学級ごとのニーズをお聞きするところからお引き受けしておりますので、金融教育の授業を企画されている学校関係者の方は、ぜひお気軽に当機構までお問い合わせください。

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